一過性脳虚血発作(TIA)の新常識 

TIAを起こせば2日以内に脳梗塞を起こす可能性が高い。すぐに病院へー

 
ある日突然、「片側の手足が動かない、

しびれる」、「片方の目が見えなくなった」、「言葉が出ない、ろれつが回らない、人の話が理解できない」などの症状が出現。驚いたのもつかの間、多くは10分前後で治ってしまう。それが一過性脳虚血発作(TIA)。これまで症状がたいてい10分前後で消失してしまうため、この病気は軽症で緊急性がないと思われがちであった。しかし、その常識は、この5年ぐらいで大きく変わってきた。

 

最近の数々の報告から、TIAは脳梗塞が差し迫った際の「前ぶれ」であり、緊急性を要する危険な状態であることが明確になった。すなわちTIAを何もしないで放置すれば発症後3カ月以内に1015%が脳梗塞を発症し、しかも、そのうちの半数は48時間以内に起きることが分かってきた。TIA発症後48時間が要注意だというデータが数字で示されたため、2009年には医師に対する国内の治療ガイドラインも改訂され、注意をうながすこととなった。

 

従来から、TIAは「脳梗塞発症の前ぶれ」だと言われては来たが、それは「TIAを起こすと5年以内に3割が脳梗塞を起こす」といったそれほど緊急性を感じさせないデータに基づくものだった。そのためか、国内ではいまだに「TIAは軽症で緊急性がない」と誤った認識がなされているのが現状であった。

 

最近の研究によれば、脳梗塞を起こした2416人のうち23%549人)が脳梗塞を発症する前にTIAを経験していた。そのうち脳梗塞発症日からさかのぼって7日以内にTIAを起こしていた患者が43%234人)を占め、中でも前日と当日の発症が多かったという結果が分かった。さらに、TIA発症後、迅速に診断・治療を行うことで、その後の脳梗塞発症率が大幅に下げられるという複数の大規模臨床試験の結果が報告されている。

 イギリスの研究では、TIAまたは軽度の脳梗塞を発病した患者に対し、発症から1日以内に迅速に診断、治療を開始した場合と、発症から20日後に治療を開始した場合とを比べたところ、早期に治療を開始した場合では90日以内の脳梗塞発症リスクが80%も減少することが分かった。

 

またフランスの医療機関でも、24時間体制でTIA患者を受け入れるシステムを作り、発症24時間以内に診断・治療を行ったところ、90日以内の脳梗塞発症率は、予測された発症率に対して、やはり80%も低くなることが分かった。

 なお「TIA23割は心臓病が原因となり、すなわち心房細動などの不整脈から来る心原性塞栓性TIAであり、一度脳梗塞を起こすと通常の非心原性TIAに比べてより重度になりやすい。心房細動がある方にTIAが起こった場合、緊急性がさらに高いと考えて、より迅速に対処を行った方が良い。

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