突然に片目が見えなくなった(一過性黒内障)

突然、片眼だけに「黒いカーテンがおりてくるように」、「白っぽく霧がかかるようになって」、「黒い水平線が上がってくるようにして」、「写真のネガのような見え方のようになって」、そして目が見えなくなってしまうというような症状が出現、このような症状が23分の間続いて、普通、数分以内、長くても20分位で元の見え方に戻る。こういったものを一過性黒内障と言います。

眼球に行く動脈(眼動脈)は、脳に行く動脈(内頚動脈)が一旦頭の中に入って、しばらく走ってから、その後、枝分かれして、再び頭の外に出て眼球に向かいます。要するに眼動脈は枝分かれした脳の動脈のうちの1本のようなものなのです。そこで、眼動脈系の動脈硬化の程度と、脳の動脈の動脈硬化の程度とには非常に似通ったところがあります。それで、眼底検査を行いますと、眼底の動脈の動脈硬化の程度から、全身の動脈、あるいは脳の動脈の動脈硬化の程度を類推したりすることが出来るのです。一過性黒内障は、首から脳に至る内頚動脈、そして、その内頸動脈から枝分かれして眼動脈を介して眼球にいたるまでの血管系に問題が起こり、そのせいで眼で必要な量の血流が供給されなくなってしまった際に生じる症状です。この原因としては、ひとつは動脈硬化が起きて動脈が狭くなっている部分に血栓〈けっせん〉(血液の固まり)が形成され詰まってしまった場合、あるいは血圧の変動(血圧の低下)などをきっかけとして、狭くなった部分より先に十分な血液が流れなくなった場合。もしくは、動脈硬化が起こって狭い部分が出来ていますと、狭くなった動脈の壁の部分に血液の塊(血栓)が出来やすくなります。そして、なにかの拍子に、内頸動脈〜眼動脈にかけての部分で出来た血栓が血管の壁から剥がれ、塞栓となって先の方の動脈の方に流れて行って、そこを詰まらせてしまう場合などがあります。

この一過性黒内障は、内頚動脈系の一過性虚血発作(TIA)のひとつで、脳梗塞の警告症状と考えられています。例えば、内頚動脈の壁に出来た血栓の一部が剥がれて眼動脈の方に流れて、そこが詰まってしまいますと一時的に目が見えなくなってしまうのです。一方、この剥がれた血栓が脳の動脈の方へ流れて行って、その動脈を詰まらせてしまいますと半身の麻痺や、しびれ、言語障害が起こるという分けです。そして、完全に詰まらせてしまった場合は脳梗塞になってしまうことになります。

なお、このような症状は、動脈硬化性病変によって、眼動脈から枝分かれして眼底に分布する網膜中心動脈が閉塞した場合にも起こります。この場合網膜中心動脈の本幹での症状は、この一過性黒内障と同じです。一方、網膜中心動脈から枝別れした枝の部分に起こった場合は、視野の全部ではなく、視力障害は視野の一部に起こります。網膜中心動脈が閉塞してしまった場合、普通、1時間以内に血流が改善しませんと、網膜機能の回復、すなわち視力の回復が期待できないと言われています。

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