ウイルス性髄膜炎


昔は、この病気のことを脳膜炎と呼んだ時代もあります。髄膜炎を起こす原因には、細菌、ウイルス、真菌(カビのこと)などがあげられます。

ウイルス性髄膜炎とはウイルスによって起こった髄膜炎のことで、ウイルスが頭の中に入って起こります。この病気は、春から夏にかけ、特に初夏に多く、エンテロウイルス(原因の80%を占める。コクサッキー、夏かぜの原因であるエコーウイルスなど)によるものが多く、ムンプスウイルス(原因の10%を占める。流行性耳下腺炎に併発)によるものもあります。発熱、頭痛、吐き気などの症状で発病し、一般的に良好な経過をたどり自然に治癒します。そこで、通常、特別な治療を必要としません。夏かぜにかかった場合で、発熱と同時に、頭痛や嘔吐などの症状が強い場合は髄膜炎を考えなくてはいけません。確実な診断にはルンバール(腰椎穿刺)と言う腰からの注射で、髄液を採取し、これを顕微鏡で検査しますと、ウイルス性髄膜炎の場合、髄液の中でリンパ球という白血球が増えていることから診断出来ます。ただし、かなり痛い注射ですし、ウイルス性髄膜炎は予後良好な病気ですから、すぐにルンバール検査を行うかどうかは医師の判断によります。

一般に、ウイルス性髄膜炎の予後は良好ですが、中には脳炎を起こすこともありますから注意が必要です。ウイルスが脳の中に入いると、これをウイルス性脳炎と言い、髄膜炎とちがって、脳の症状、すなわち人格の変化、けいれん発作、手足の麻痺、あるいは意識障害が起こり、そのせいで錯乱などを生じることもありますし、進行すると昏睡状態となったりします。このウイルス性脳炎の3分の1を占めるのが単純ヘルペスウイルスによるヘルペス脳炎です。このヘルペス脳炎は命にかかわる病気ですが、抗ウイルス薬のアシクロビルで早目に治療すれば救命できます。そこで、診断が疑わしい場合は、アシクロビルを投与することもあります。ヘルペス脳炎の初期症状は、頭痛、発熱以外に、側頭葉の炎症を示す症状が多いのが特徴です。これには、異臭(嫌な匂い)、過去の出来事や経験の鮮明なフラッシュバック、激しい情動などを伴うけいれん発作などがあります。

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