認知症初期の兆候
―回りが早く気づいてあげることが大切
「小銭を使わなくなった」
東京医科歯科大の朝田隆特任教授によると「何度も同じ話をする」、「小銭を使わなくなった」など日常生活でのサインが、認知症の初期症状として多いと指摘している。
ドアノブがうまく回せない
愛知県に住む64歳の男性は、ペットボトルのお茶を飲もうとしたとき、こんな違和感に気付いた。「蓋を開けようとしても、うまく回せない。何度やってもできず、妻に頼んで開けてもらった。瓶ビールの蓋を栓抜きで開けることは出来たし、握力が落ちたのとは違う感覚だった。これは、認知症になる前段階の軽度認知障害(MCI)によく見られる兆候だという。
「認知症の初期では、視空間認知機能が低下する。そのため、初期の段階から「回転」を必要とする動作に弱くなるという。
蓋を回して開けるのが苦手になるだけでなく、靴ひもが結べなくなる、引き戸は開けられるけど、ドアノブがうまく回せなくなる、ネクタイを結ぶのに時間がかかる、といった症状も出てくる。このほか、自動販売機にうまくおカネが入れられない、道に迷いやすくなる、電話をかけるのに時間がかかる、といった兆候が出てくることもある。
アルツハイマー病の比較的早期に現れるサイン「振り向き徴候」―「どうだったっけ?」と家族に答えを促す仕草
アルツハイマー病の受診の目安になるサインがある。それが「振り向き徴候」と呼ばれる行動。例えば、高齢の母親と娘が買い物に行ったとする。店員さんがお母さんに何か質問したのに、お母さんは答えずに、後ろにいる娘さんを振り返って、「どうだったっけ?」とか「あなたが答えてよ」などと、娘さんに答えを促す……。これが振り向き徴候。 この振り向き徴候は、以前から認知症の人に見られる行動として知られていた。
重症度で変化する「振り向き徴候」の頻度
認知症が疑われる人751人(平均年齢は73歳)で調査した結果、振り向き徴候が見られる頻度は、重症度によって大きな差が出た。「軽度相当」の人では87.5%、「中等度相当」では97.7%と、高い割合で振り向き徴候が見られたが、「重度相当」の人では42.5%と半減していた。軽度〜中等度では、自分が質問されていることやその内容がわかっているものの答えられないので同伴者に助けを求めるけれども、重度になると質問されていること自体がわからないようになってくるからだと考えられる。
サインに気づいたら詳しい検査を
振り向き徴候は、アルツハイマー病になりかけているかどうか、家族や周囲の人が、日常生活のなかで気づくことのできる有用なサインであり、早目に医療機関を受診すること。