めまい・ふらつき

 

高齢化社会を迎え、「頭がふらつく」、「めまい」がするという方が増えている。こういう訴えのなかには、1、回転性のめまい、2、フラフラする浮動性めまい、3、目の前が暗くなりフーとなる「失神性めまい」の場合などがある。「めまい」とは、体のバランス感覚(平衡感覚)に障害が起こった時に感じる症状である。体のバランス感覚は、全身にある耳、筋肉(特に首)、関節など平衡感覚に関する複数のセンサーから伝わった情報を、脳が総合し把握(認識)することによって成り立っている。

 

平衡感覚に関する最も重要なセンサーは耳にある。耳の奥の「内耳」には、頭の位置や運動を感じるための「三半規管」というセンサーがあり、平衡感覚に関する情報(信号)は、「前庭神経」を通り、脳幹部にある前庭神経核を経由して脳に伝わる。次に重要な平衡感覚のセンサーは「首の筋肉」の中にある。そこで、「めまい」は脳、耳、首などの病気で起こることが多い。

 

一般に耳の病気では「回転性のめまい」が、脳の病気では「回転性のめまい」も「浮動性めまい」のどちらも起こる。「首の筋肉」がひどく凝っても「浮動性めまい」が起こることがある。

 

「めまい」を起こす原因のうち、怖いものは「脳の病気」によるものである。最近、動脈硬化による慢性的な脳循環障害から「めまい」を起こす方が増えている。このような方にMRI検査を行なってみると大脳に淡い白い斑状の異常所見をみることが多い。このような所見は脳血流低下による白質希薄化であろうと推測されている。

 

平衡感覚の通り道である前庭神経核は脳幹部にあるが、その血流が悪くなると「めまい」が起こる。ここに血流を送っているのが椎骨脳底動脈であり、その血行不全の症状としては回転性めまい(45%)が最も多く、浮動性めまい(25%)、眼前暗黒感(15%)もみられる。発作が繰り返し起こっているうちに、最終的には脳梗塞を生ずる例(5年以内に 35%位)もみられる。なお脳梗塞を起した方を調べてみると、その 80%は7〜8カ月前に椎骨脳底動脈循環不全を経験していたとの報告もある。また激しいめまいのため救急車で運ばれて、内耳性めまいと診断された老人の1/4は小脳梗塞であったという研究も発表されている。なお 小脳も椎骨脳底動系から血流を受けている。

 

東海大学神経内科教授 北川泰久氏は次のように述べている。脳神経領域では慢性的な脳循環障害が増えている。たとえば高齢者で小さな梗塞あるいは脳梗塞後遺症があってフラフラすると言った例が結構あります。高齢者が増えている分、症状が出ないような小さな脳梗塞によるめまいが増えていると思います。椎骨脳底動脈血行不全の病態は椎骨脳底動脈系の一過性脳虚血発作、すなわち椎骨脳底動脈の血流が悪くなるためにめまいが起こるというものです。MRIで小さな脳梗塞がたくさんあるということは、慢性的に脳循環不全を起こしているということです。

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