一過性脳虚血発作(TIA)は脳梗塞の前ぶれ

 

一過性脳虚血発作のことを英語では「TIA」と言いますが、transient(一過性の)ischemic(血流が乏しくなる)attack(発作)という意味です。

 

この発作の原因は、脳の一部の血液の流れ一時的に悪くなり、そのせいで「半身の運動まひ」や「しびれ」、「ろれつ困難」などの症状が現れることによります。しかし症状は24時間以内(多くは数分から数十分)に完全に消えてしまいます。

 

しかし良くなったからと治療しないで様子を見ていると、3か月以内に1520%の方が脳梗塞を発症し、そのうち半数の方では発作を起こしてから数日以内(特に48時間以内)に脳梗塞になることが分っています。

 

すなわち、一過性脳虚血発作は脳梗塞の「前ぶれ発作」「警告発作」であり、脳梗塞になってからでは手遅れになる可能性もあり、すぐに医療機関を受診する必要があります。

 

一過性脳虚血発作で起こる症状は、急に起こった、片側の手足や顔面のまひなどの運動障害、片側の手足や顔のしびれや感じ方が鈍くなるなどの感覚障害、ろれつが回らない、言葉が出なくなる言語障害、片方の目が見えにくくなる視力障害(一過性黒内障)、片側にあるものが見えなくなる視野障害(同名半盲)などです。

 

一過性脳虚血発作は、大きく分けて二つの原因で起こります。動脈硬化と心臓の病気です。

 

この発作の多くは動脈硬化が原因で起こります。比較的太い動脈(特に頸部の頸動脈)に動脈硬化が起こると、動脈の壁に血栓が出来やすくなります。この血栓がはがれて、血流にのって、より先の動脈の方に流れて行き、動脈を詰めてしまうと症状が出現します。血栓が小さい場合は、動脈が詰まっても、すぐに溶けて流れ去ってしまうため、しばらくすると血流が回復し症状も消えてしまうのです。しかし、このようなことを繰り返しているうち、詰まった血栓が溶けずに詰まったままとなることもあり、そうなると、その先の脳細胞が死んでしまい、脳梗塞を起こすことになるのです。

 

もう一つの起こり方は、動脈硬化によって狭くなった脳の動脈がある場合、急に全身の血圧が下がったりすると、その先の脳の血流がさらに悪くなり、そのせいで症状が出現するのです。この狭くなったところが詰まってしまうと、脳梗塞が起こることになります。

 

心房細動などの不整脈があると心臓に血栓ができやすくなり、この心臓の中に出来た血栓が脳の動脈に流れていき、動脈が詰まると症状が出現します。動脈硬化と同じように、詰まった血栓が溶けて流れ去ってしまうと、症状は一時的で回復することになります。しかし溶けずに詰まったままになると、脳梗塞になってしまうわけです。

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