強い体幹失調を伴う「めまい」に脳梗塞の疑い

(第20回日本脳神経外科救急学会)

 

帝京大学耳鼻咽喉科教授の室伏利久氏は,第20回 日本脳神経外科救急学会(20151月開催)のシンポジウム「軽症神経救急診療の現状と課題」で、症状や所見が時間とともに変化する「めまい」のうち,強い体幹失調(ふらつき)や頭痛を伴う「めまい」は、脳梗塞の疑いがあることから、注意が必要であると提言した。発作直後、ひととおりの診察だけでは脳梗塞かどうかの診断は困難であり、「強い体幹失調を伴うめまい」では、常に脳梗塞もしくは脳梗塞に発展する可能性も考え、必要な検査を行っておくことが大切である。「めまい」の原因には,「耳からのめまい」、すなわち末梢前庭神経障害(メニエール病,良性発作性頭位変換性めまい、前庭神経炎など),あるいは自律神経障害(起立性血圧調節障害などによる脳貧血によるもの),さらに「脳からのめまい」、すなわち中枢性めまい(椎骨脳底動脈血行不全、小脳・脳幹梗塞などの脳梗塞),もしくは循環器の障害(心筋梗塞,不整脈などの心臓病,低血圧)などで起こるものなど、多彩な病態や疾患が含まれる。「めまい」で救急入院になった方の原因のうち、室伏氏の調査では「中枢性めまいが多く」、そのうち脳・脳幹梗塞であったケースが約6割存在するとのことである。また、救急診療を受け、その際に、脳梗塞など 中枢性神経疾患の可能性が低いとされた「めまい患者」の中に,頭痛や顔面の一部の痺れなど「脳梗塞」を疑うに足る症状を伴う者が見受けられることがある,と同氏は指摘する。

 

突然に「めまい」が起こったとき

(国立循環器病センター)

 

ある日、突然、回転性めまいやフラフラ感が起こった場合、その原因はなんでしょうか?突然、めまいが起こり緊急入院した患者さんのうち、脳の症状がなかった約100人の患者さんに対し、詳しい検査(脳のCTMRI)を行って、その原因を調べました。その結果、原因の81%は耳鼻科の病気でした。しかし、残りの12%に脳梗塞が見つかりました。これらの脳梗塞の方の大半では、入院から退院まで症状は「めまい」だけで、他の脳の症状は現れませんでした。このように、「めまい」だけのように思えても、実は脳梗塞の場合があるのです。脳梗塞が非常に小さくて、めまいの症状しか出ないため、見逃されているケースも少なくありません。「めまい」だけの脳梗塞は、一般に小さく軽症のことが多いのですが、時には、めまいで始まり、後になって昏睡になったり、手足のまひを伴う重症の脳卒中に発展する例もあり、要注意です。そこで、めまいが突然起きたときは、一度は脳卒中の専門医に診てもらった方が安全です。

 

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