認知症か、年をとったせいの単なる物忘れか

 

「物忘れ」が目立つようになった場合、これが病気(認知症:アルツハイマー病)なのか、「加齢に伴う心配いらない物忘れ」なのかと心配される方も多いようです。徘徊が見られ迷子になったりとか、物盗られ妄想がみられるなどの場合は、アルツハイマー病と判断するのは難しくはないでしょう。案外難しいのが「物忘れという訴えだけ」の場合です。 

アルツハイマー病で見られる物忘れと加齢に伴う物忘れを見分けるには、物忘れが進行するかどうか、日常生活に支障を来たすかどうかという点がポイントとなります。

「物忘れは、1年前よりも今のほうが悪くなっていますか? あるいは変化がありませんか?」、アルツハイマー病では、症状が必ず進行・悪化するのが特徴です。一方、年齢に伴う心配いらない物忘れでは、通常、物忘れの状態が何年経っても進行・悪化しないのが普通です。そして物忘れのせいで日常生活に支障を生じているかどうかも、重要な判断基準となります。

患者さんが物忘れを認識しているかどうか!

患者さん自身が自分の物忘れを認識しているか、深刻感を持っているか、あるいは頓着していないかも、両者の区別に役立ちます。

 

アルツハイマー病では、自身の物忘れについて、認めないあるいは関心を示さない、深刻に考えていないことが多いのです(病識がないあるいは乏しい)。

 

病院へおいでになる際も、アルツハイマー病の患者さんが自ら物忘れがひどいと言って受診してくることはまずありません。大部分は家族や周囲の人々が物忘れに気付き、患者さんを病院へ連れて来るのです。一方、加齢に伴う心配いらない物忘れでは、自身の物忘れを必要以上に心配する傾向があります。すなわち年齢に伴う物忘れの場合は、自分の意志で受診してくるケースが多いと言えます。

 

「人の名前が思い出せない」、「昨日の夕食の献立が思い出せない」、「探し物が見つからない」など、多少の物忘れは誰にでも起こりうる事なので心配はいりません。このような「体験の一部だけ」を忘れてしまうのは、「正常な物忘れ」です。ヒントを与えられたり、良く落ち着いて考えれば思い出す事ができます。

 

一方、病的な物忘れの場合は、見たり聞いたりした体験全部を忘れてしまいます。会った人の名前が思い出せないという前にその人に会ったという出来事自体を忘れてしまうのが、正常な物忘れとの大きな違いです。新しい事が覚えられないため、数分前の会話を忘れてしまい、同じ事を何度も繰り返し聞き返すというのも特徴のひとつです。

 

その他、作り話をして物忘れをごまかしたり、しょっちゅう捜しものをする、自分のいる場所が分からなくなるといった症状が目立つようになります。このような認知症による物忘れの場合は、本人に物忘れをしているという自覚がない場合が多いのです。

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