腰痛がなかなか改善しない場合、ストレスが関係している可能性がある

 

発症から3か月以上続く腰痛を慢性腰痛と呼ぶ。腰痛の原因がはっきりせず、保存的治療を受けても痛みが長引き、なかなか改善しない場合、骨や筋肉、椎間板などに異常がある「器質的要因」以外に、心理的要因、ストレスが関係している可能性があることが分かってきた。たとえば家庭や職場などの「環境的要因」、うつや不安などの「心理的要因」などがあげられる。精神的なストレスが強いいと、そのせいで痛みを抑える脳内物質が放出されにくくなったり、楽しいときには痛みを忘れるような仕組みが、うまく働かなくなったりするからと考えられている。

 

痛みの悪循環を断ち切る

 

慢性腰痛の治療に使われる薬には、まず消炎鎮痛剤があげられるが、最近では、それ以外に抗うつ薬、抗てんかん薬、オピオイド(医療用麻薬)などが使用される。抗うつ薬は、「うつ」に対する効果のほか、脳内の痛みを抑えるしくみを改善し、痛みを軽減する効果もある。抗てんかん薬は神経過敏を抑え神経由来の痛みに有効である。オピオイドは非常に強い痛みや難治性の痛みに使われるが、医師の指導に従い正しく用いれば安全に使用できる。もし、長引く腰痛がストレスに関係している場合、「痛みがあるから何もできない」、「何もできないからさらにストレスがたまる」という悪循環を自分で断ち切るようにする必要がある。そのうえで、なるべくウオーキングなどの運動をしたり、趣味や外出をしたりと、できることから行動を起こし、ストレスの軽減をはかることが大切。

慢性腰痛には安静より運動、腰痛新常識 


 最近、日本整形外科学会と日本腰痛学会がまとめた治療・診断の指針「腰痛診療ガイドライン」によると、腰痛のうち、椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症など原因が特定できる腰痛は実は約15%。ぎっくり腰を含め、病態不明の「非特異的腰痛」のほうが多い。そして、今回、このガイドラインに『非特異性腰痛』の原因の一つに「心理的・社会的なストレスがあり、これが改善を遅らせる要因にもなる」との記載が加えられた。

欧米ではすでにいくつかの研究でストレスと腰痛の因果関係が証明されている。つまり「器質的異常がないのに、治療を続けても、いつまでも症状が改善しない人は、ストレスが関係している可能性が考えられるという」。腰痛のせいで人生真っ暗だと思い込んでいる人もいるが、腰のことばかり考えず、上手にストレスをコントロールし、気分転換をはかったりすることが大切というわけである。

 

これまで腰痛で受診したら、「まずは安静に」と指示される。こうした常識が変わり、「安静は必ずしも有効な治療法とはいえない」という考え方が広がってきた。慢性腰痛には運動が良い。運動療法と薬物療法の比較試験では、痛みを和らげる効果は同程度だったが、生活の質や機能回復面では、運動群が明らかに有効で、「ストレッチや腹筋、背筋を毎日続けることは再発予防にも有効」とのことである。

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