高齢社会の到来により加齢黄斑変性が急増している

 

加齢黄斑変性にかかると90%以上が視力0.1以下(社会的失明)に低下し,米国では成人中途失明原因の50%以上を占め、第1位である。わが国でも9.3%と,緑内障,糖尿病網膜症,網膜色素変性症に次ぐ第4位となっている。40歳代から起こることもあり、失明という深刻な事態を招きかねない病気であるにもかかわらず、一般にはまだ良く知られていない。これまで治療法がなかったが,近年,光線力学療法や抗血管内皮増殖因子療法が開発され,治療が可能になってきた。また,ビタミン剤などのサプリメントによる発症予防,進行抑制効果も知られるようになってきた。

 

 網膜中心部にある黄斑が変性することによって視力低下を来す病気が加齢黄斑変性である。片方の眼に異常が生じても,もう片方の眼で補う仕組みがあるため、発病早期には,気付かれないことが多い。加齢黄斑変性から視力を守るカギは、一にも二にも早期発見であり、おかしいと思ったら、すぐに眼科を受診することが大切である。

加齢黄斑変性は眼のメタボリックシンドローム

 

光や酸素の長年にわたる曝露による眼の加齢変化の蓄積が発病の背景にあるが、加齢以外のリスクファクターとして,喫煙,肥満,感染症既往なども指摘されている。喫煙者はリスクが2.4倍高いという報告もある。肥満に関しては,BMI30以上では25未満と比べリスクが2倍以上に上昇すると報告されている。また,高血圧もリスクを高めるとされている。すなわちリスクファクターの多くは,メタボリックシンドロームのそれと一致している。このことから加齢黄斑変性は加齢かつ,生活習慣病の一種と考えられている。

 

抗加齢医学の観点から種々のサプリメントを用いた予防効果が検討されている。1990年代に米国で行われた研究の結果、抗酸化作用を持つビタミンACE,亜鉛の併用で,加齢黄斑変性の進行期への移行リスクは25%低下したという。また同時期に行われた種々の研究の結果から,やはり抗酸化作用を有するドコサヘキサエン酸(DHA),エイコサペンタエン酸(EPA)の発症,進行予防効果も示唆されている。

 

 予防法としては,サプリメントでの栄養補給の前に,まずは日頃の食生活の改善が重要である。ホウレンソウなどの緑黄色野菜、またDHAEPAを多く含む魚類を多く取り入れた食事が良い。また直接のリスクである光線曝露を避けるために,UV(紫外線)カットサングラスを装用することも有効であり、光の中でも、特にリスクとなることで近年注目されている短波長光の青色光は,屋外だけでなく、屋内環境においてもテレビ,パソコン,携帯電話などから発せられている。そこでまだ研究中とのことであるが,長時間のパソコン操作時などにブルーライトをカットする眼鏡の着用なども勧められる。

ページトップへ

inserted by FC2 system