高齢者のふらつき

 

高齢化社会を迎え、「頭がふらつく」、「めまい」がするという方が増えている。こういう訴えのなかには、1、回転性のめまい、2、フラフラする浮動性めまい、3、目の前が暗くなりフーとなる失神性めまいの場合などがある。最近、脳神経領域では、動脈硬化による慢性的な脳循環障害が増えている。高齢者の方に「ふらつく」という訴えは案外多いものである。このような方にMRI検査を行なってみると大脳に淡い白い斑状の異常所見をみることが多い。このような所見は脳血流低下による白質希薄化であろうと推測されている。

 

こういった脳の血液の流れが悪い病態を椎骨脳底動脈血行不全あるいは慢性脳循環不全と言う。椎骨脳底動脈血行不全とは一過性脳虚血発作の一種であり、症状としては回転性めまい(45%)が最も多く、浮動性めまい(25%)、眼前暗黒感(15%)もみられる。発作が繰り返し起こっているうちに、最終的には脳梗塞を生ずる例(5年以内に 35%位)もみられる。なお脳梗塞を起した方を調べてみると、その 80%は7〜8カ月前に椎骨脳底動脈循環不全を経験していたとの報告もある。

 

東海大学神経内科教授 北川泰久氏は次のように述べている。脳神経領域では慢性的な脳循環障害が増えている。たとえば高齢者で小さな梗塞あるいは脳梗塞後遺症があってフラフラすると言った例が結構あります。高齢者が増えている分、麻痺が起らないような小さな梗塞によるめまいが増えていると思います。椎骨脳底動脈血行不全の病態は椎骨脳底動脈系の一過性脳虚血発作、すなわち椎骨脳底動脈の血流が悪くなるためにめまいが起こるというものです。MRIで小さな脳梗塞がたくさんあるということは、慢性的に脳循環不全を起こしているということです。

 

脳血流低下例では体動、頭位変換によりめまいが起こる

 

人の脳には、脳血流自動調節能の存在により一定の範囲の血圧変動では脳血流が変化しないようなシステムが存在する。ところが、例えば動脈硬化性疾患などのせいで脳血流が低下し、臨界値(症状が出る下限値)に近い状態にある場合、通常の場合(安静時)は無症状であるが、頭位変換、うつむく、立ち上がるなどの体動などにより容易に脳血流がさらに低下し臨界値以下となって、その動作とともに、フーとか、フラフラというような症状が出現するが、これを頭位変換によるめまいと感じることも多い。

 

医師向けの書籍であるが「プライマリーケア‐医のためのめまい診療の進め方」(新興医学出版社)に記載されている事項を紹介する。

 

1.    高齢者のめまいは要注意。

2.    重大疾患を見逃さない。

3.    高齢者の起立性低血圧を診たら、脳幹の血流低下、つまり椎骨脳底動脈血行不全があるとまず考える。

 

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