アルツハイマー病の予防

アルツハイマー病にかかった患者さんの脳を顕微鏡で調べてみると、正常な脳にはない茶色いシミのようなものがたくさん見つかります。これは「β(ベータ)タンパク」という物質が溜まったものです。βタンパクは、脳の神経細胞が作る「ゴミ」のようなもので、アルツハイマー病の主な原因と考えられています。通常、βタンパクは脳の中にある酵素などが掃除してくれるのですが、この酵素が減ってしまうと、脳の中に溜まってくるのです。

アルツハイマー病にかかると、溜まったβタンパクによって脳が障害を受けます。脳には、βタンパクの影響を受けやすい場所と、受けにくい場所があると考えられています。最初に影響を受けるのが、側頭葉にある記憶を司る海馬(かいば)です。そこで、アルツハイマー病の初期症状として記憶障害(物忘れ)が起きることが多いのです。

脳にβタンパクが溜り始める時期には個人差があり、40代で20人に1人程度、50代で20人に3人程度、70代で半分程度の人に溜り始めます。そしてβタンパクが溜り始めてから症状が出るまでには、20年位かかると考えられています。しかしβタンパクが溜まっても、発病するまでの期間を遅らせることができる予防法が分かってきました。

主なものを紹介しましょう。

 

「有酸素運動」

アメリカでの実験で、「運動しやすい環境に置かれたネズミは、βタンパクが溜りにくい」という結果が示されました。運動によって、脳でβタンパクを分解する酵素が活性化されたためと考えられています。「運動」にはアルツハイマー病を予防する効果があることが、大規模な調査でも明らかになっています。ヨーロッパでの調査では、適度な運動をしている人は、していない人よりも、アルツハイマー病の危険度がおよそ3分の1になっていると分かりました。なお、予防効果が見られたのは、120分以上の、ちょっと汗ばむ程度の運動(有酸素運動)を週に2回以上行っている人たちでした。

「話し相手を持つ」

会話が減るとアルツハイマー病が進行することが分かりました。会話をしている時の脳を調べると、とても活性化していることが分かっています。ヨーロッパでの研究によると家族や友達が多く社会的接触が多い人に比べ、乏しい人は認知症の発症率がおよそ8倍でした。会話をすることによって脳が活性化し、アルツハイマー病になるのを抑える効果があったのではないかと考えられています。

「生活習慣病にかからない食生活」

ヨーロッパでの研究によると、高血圧、高コレステロール、肥満があるとアルツハイマー病を中心とした認知症の危険度が増すことが分かりました。普段から、塩分や脂っこいもの(動物性脂肪)を控え、腹八分目にして適正体重を保つことが大切です。

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