鏡を見て顔の半分がゆがんでいるのに気付きました

(顔面神経麻痺)

 

顔面神経麻痺でよく見られる症状

 

1、 耳の後が痛んで12日してから顔がゆがんでいるのに気付  いた(顔面神経麻痺の前ぶれ)。

2、 イーッとした時に顔の半分がゆがむ。

3、  顔の半分がこわばった感じ、あるいは、しびれたよう     な感じがする。

4、   まぶたをしっかりと閉じられない。

5、    洗顔の際に、石鹸が目にしみる。

6、    口笛をうまく吹けない。

7、     片側の口角から食べ物がこぼれ落ちる。


 ホッペタや口唇、マブタ、額にある顔面の筋肉は、脳から出た顔面神経を介して働いています。この顔面神経が何らかの障害を受け、そのせいで顔面の筋肉の動きが悪くなった状態が顔面神経麻痺です。

 

この顔面神経麻痺はその原因によって、中枢性と末梢性との二つに分けられます。すなわち中枢神経である脳の病気で起こる場合と、そこから出ている末梢神経に障害が起こったことによる場合とがあります。中枢性の顔面神経麻痺の多くは 脳梗塞などの病気によって起こる場合ですが、一般に顔面だけの麻痺ということは稀で、同時に半身の手足の麻痺やしびれ、あるいは眼球運動の麻痺のせいで物が二重に見える複視など、その他の症状を伴うことがほとんどです。症状の違いとして、中枢性顔面神経麻痺の場合、前額部(ヒタイ)の麻痺がほとんど起こらないので、末梢性と違って麻痺した側のヒタイにしわができるのが末梢性との違いです。

顔面神経は耳の骨(側頭骨)の中から頭の外へ出て、次に耳下腺の中を走行し、そこから出て顔面の筋肉に分布します。そのため、末梢性の顔面神経麻は内耳・中耳・耳下腺の病気で起こります。その原因には、以下のようないろいろなものがあります。例えば、帯状ヘルペスの感染、ギラン・バレー症候群、糖尿病、頭蓋底部の病変、サルコイドーシス、ライム病、耳下腺炎、中耳炎(急性中耳炎、慢性中耳炎、真珠腫性中耳炎)、乳様突起炎などの病気で起こることがあります。しかし、末梢性顔面神経麻痺の大部分は、原因不明の特発性のものです。この特発性の末梢性顔面神経麻痺は、イギリスの医師の名前に由来してベル麻痺ともよばれています。ベル麻痺の大きな誘因としては、まず寒冷刺激をあげることができます。例えば、クーラーの冷気が顔の半分にあたっていたり、車の窓を開けて顔に風を受けて走っていたといったことでも麻痺が引き起こされることがあります。その他の引き金としては、過度の飲酒、精神的ストレス、過労などがあります。そして、その結果、顔面神経に酸素と栄養を供給する血管が細くなって、十分な酸素と栄養を受け取ることができなくなり、顔面神経の障害が起こるとする説、一方、最近、ウイルス(特に風邪の時の口の周りの水疱や口内炎をおこす単純ヘルペスウイルスや水ぼうそうや帯状疱疹をおこす水痘帯状疱疹ウイルス)が原因となっている場合が多いと考えている医師が増えていますが、まだ不明な点が多いようです。

 

より良い回復のため顔面神経麻痺は早期診断・早期治療が大切です。特に帯状疱疹ヘルペスウイルス(水疱瘡のウイルス)によって起こるラムゼイハント症候群の場合は直ちに特効薬である抗ウイルス剤を投与する必要があります。そこで、耳やその周囲に痛みを伴ったり、あるいは痛みを伴った水疱が出来ているのに気付いたら、すぐに医療機関を受診して下さい。

 

特発性末梢性顔面神経麻痺(ベル麻痺)の症状


 ベル麻痺では前ぶれの症状として、麻痺が現れる側の耳の後ろの痛みを覚えることがありますが、しかし、ほとんどの場合、何の前ぶれもなく、突然に顔面の片側の顔面の麻痺が起こります。麻痺が起こりますと、マブタを閉じる筋肉が麻痺し、マブタを閉じようとしても上マブタが十分に下がりません。そこで、目をしっかりと閉じることが困難になります。麻痺がひどい時には、マブタが上がったままで眼球結膜(白目)が見えたままになり、これを兎眼(とがん)と呼びます。この状態を放置していますと角膜が乾燥し、角膜炎を併発して失明にいたることもあります。瞬(マバタキ)きがうまくゆかなくなって、顔を洗う時に、目の中に水が入ってしまったりすることもあります。また、上を見たとき額(ヒタイ)に「しわ」ができますが、麻痺している側では、この額の「しわ」が出来にくくなります。麻痺側では口を閉じる力が弱くなり、パ行やマ行の発音が、息がもれてしまってうまくできなくなりますし、口笛が吹きにくくなったり、ふくれっつらが出来にくくなります。麻痺した側の口角が下がるために、そこから、よだれが出たり、食べ物や飲み物がこぼれやすくなります。


 多くはありませんが、麻痺した側の舌に味覚障害が起こり味が分かりにくくなることもあります。また、聴覚敏感(音が大きく、あるいは割れてやかましく感じる)、唾液分泌の減少、涙腺分泌の低下などの症状を伴うこともあります。 

 

ベル麻痺では通常、麻痺がでてから1週間ぐらいの間は症状が悪くなることがあります。そこで一番ひどい麻痺の状態がどの程度なのかは、1週間ぐらいたたないと分かりません。一般に、麻痺が重度なほど治るまでに時間がかかり、また治り方も不十分で後遺症が残ることが多いと言えます。一般に、ベル麻痺の8090%の患者さんは目立たない程度ぐらいまでには回復します。神経の腫れを軽くする目的でステロイド剤の投与がアメリカ神経学会の治療ガイドラインにより勧められています。単純ヘルペスウイルスが発病に関与していることが疑われており、抗ウイルス剤を投与することも試みられています。併せて、神経の回復を早めるためのビタミン剤の投与、また星状神経節ブロックという首に注射することによって顔面の血液循環改善を図る治療方法も行われます。
 なお、眼が閉じないためや涙液分泌障害のため、角膜が乾燥し角膜炎を起こすことがありますので、点眼液を使用します。

麻痺が軽度であれば12か月で完全に治ります。麻痺が軽度の場合は12カ月以内、中等度の場合は23カ月程度で治ることが多く、後遺症の可能性もあまりありません。多くの場合、発症1カ月を過ぎた時期から改善しはじめます。一度障害された神経が障害された部位から徐々に再生してくるためです。しかし、麻痺が高度な場合、2〜3カ月でよくなることもありますが、ある程度回復して症状が固るまで6カ月前後かかることもあります。そして、完全に治る率は8090%程度であり、612か月経過しても麻痺が残ったり、まぶたと口が一緒に動く病的共同運動、痙攣(けいれん)やひきつれなどの後遺症を残すこともあります。
  

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