急に意識を失って倒れた。

 

突然に意識を失って倒れた場合、そのほとんどは失神(しっしん)と言われるものです。しかし、中には、くも膜下出血、脳出血、脳梗塞、心臓病、あるいは、てんかん発作による場合もあります。

 

失神とは、急激な血圧低下などにより脳に行く血液が減り、脳貧血が起こって一時的に気を失うことを言います。意識喪失が15秒以上続いた場合、体や手足が痙攣することもあります。一般に、失神では倒れて横になると、脳への血流が元に戻ります。そこで、すぐに意識が戻るのが普通です。なお、ひっくり返った際に頭を打ったりする場合もあり、打撲により、稀に骨折してしまうこともあります。また、意識を失う前に、一瞬、視野が真っ暗に、あるいは真っ白に見えることがよくあります。

 

若い方の失神のうち多いものは、副交感神経反射のうち血管迷走反射と呼ばれるものが原因で、これが起こりますと血圧は下がり、脳に十分な血が行かなくなって一時的に意識を失うのです。この反射を起こす引き金としては、恐怖、驚き、強い痛みなどをあげることができます。また、排尿の際、咳発作時、息み動作などでも同様に失神を起こすことがあります。


 頚部を走る頚動脈には頚動脈洞という部分があり、そこを圧迫されたり、刺激されたりしますと脈拍が下がって、血圧が低下します。そこで、首を締め付けるような服装、きついカラーによって、あるいは首を回した際などに失神をきたすことがあります。


 一方、血管の緊張を維持する交感神経が障害されますと、血圧が下がり脳貧血からフーと気の遠くなるような感じを生じます。ひどい時には失神を生じることもあります。そのひとつは、「立ちくらみ」としてよく知られた現象で、立ち上がった際に血圧が下がって脳貧血をきたすもので、これを起立性低血圧と言います。この起立性低血圧は、低血圧ぎみでやせた若い方によくみられますが、それ以外に手足の動きが鈍くなるパーキンソン病、糖尿病による末梢神経障害の方にもよく起こります。

 

注意が必要な失神の原因

 

1、             血圧の薬が効きすぎている場合、普段から頭がフラフラしたり、立ちくらみをきたしたりすることがあります。血圧の薬を飲んでいるかた大丈夫と安心しないで、時々、測ってみることが大切です。

2、             心臓の病気による失神、例えば危険な不整脈や、心臓弁膜症、心不全などが原因で失神をきたすことがあります。この場合、それを放置していると生命にかかわることがあります。

3、             年配の方の失神では、多くはありませんが、脳へ行く動脈が動脈硬化などで狭くなり、そのせいで一時的に血液の流れが悪くなって起こる場合があります。このようなものを椎骨脳底動脈循環不全、あるいは一過性脳虚血発作と言い、稀に脳梗塞の前触れの場合があります。

4、             稀な原因ですが、膠原病の一種(高安病)で動脈が狭くなって起こる場合もあり、これを鎖骨下動脈盗血症候群と言って、手を上に上げた際に失神が起こる特徴があります。また、老化現象で飛び出した頚椎の骨が動脈を圧迫して起こる場合もありますが、この場合、首をひねった際にフーッとなったりします。さらに稀な原因としては、脳への動脈のひとつである椎骨動脈が首の付け根のあたりで曲がって(屈曲)いるせいで血液の流れが悪くなることがあります(パウエル症候群)、この場合も首をひねった際に症状が出現する特徴があります。

 

ところで、脳貧血が起こった場合、普通、すぐに横になって休まれるでしょう。この時、直ちに、下がった血圧を上げて治そうとする働きが起こるのが普通です。すると、横になって血圧を測った時点では、むしろ血圧が普段より上がってしまっていることが多いのです。このような現象を仰臥位高血圧と呼びます。ところが、このような状況は、元々、血圧が下がって起こっているのですが、これを血圧が上がっておかしくなったと勘違いされてしまう場合があります。このような場合、単純に血圧が高いからと言って無理やり下げてはいけません。逆効果になってしまうからです。

 

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